【プレスリリースのお知らせ】軽量かつ充電長持ち!超低電力「指輪型無線マウス」を開発

2025年10月03日

2025年10月1日、「ごくわずかな電力で動く指輪型無線マウスの開発に成功――日常空間でARグラスを目立たず半永久的に扱うコントローラに向けて――」のプレスリリースを発表しました。
本研究では、一度のフル充電で1ヶ月以上動作する超低電力な指輪型無線マウス「picoRing mouse」の開発に成功しました。ARグラス(拡張現実眼鏡)を日常的に使うための、軽量でバッテリー切れの心配が少ない画期的な入力コントローラとして期待されます 。  
(プレスリリース)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2025-10-01-003

従来の課題
軽量なARグラスと併用して使うことができる小型指輪型デバイスは、物理的な制約から小さな電池しか搭載できませんでした 。従来のBLE(Bluetooth Low Energy)などの低電力無線通信技術を使っても、連続してデータを送信すると、5〜10時間程度で電池切れが生じてしまい、頻繁な充電が必要でした。 

研究のポイントと解決策
本研究では、超低電力な無線通信技術を開発し、一度のフル充電で1ヶ月以上動作する超長時間駆動を実現しました 。  

1. 超低電力化の実現
指輪型マウスの消費電力の大部分を占めていた通信方式を根本的に見直し、従来のBLEの約2%まで大幅に削減 。  
指輪—リストバンド間では、高感度なコイル設計により通信距離を長くした、超低電力な磁界バックスキャタ通信を採用しました 。外部の磁界を反射させるだけで情報を送ることができるため、電力消費の大きな信号増幅や発振器が不要となり、非常に低い電力で動作します 。

2. 通信性能の向上と中距離化
従来のNFCといったバックスキャッタでは通信距離が1~5cmに制限されていましたが、本方式は中距離12~14cm程度での信頼性の高い通信を実現。また、分散コンデンサを利用した高感度なコイルと、ノイズを打ち消すバランスドブリッジ回路を組み合わせました。  
これにより、磁界バックスキャッタの通信距離を約2.1倍に延伸。外部の電磁ノイズに対しても頑強な通信性能を発揮します 。 

今後の展望
本技術は、ARグラスの操作性を飛躍的に向上させます。特定の環境だけでなく「誰もが日常的に使う道具」へと変わるきっかけとなり 、普及を加速させることが期待されます。さらに、電力の制約で利用が難しかった小型ウェアラブルデバイスの実用化を大きく前進させることで、ウェアラブル無線通信の研究の発展に寄与します 。  

関連リンク
https://www.ryotakahashi.me/

論文情報
学会名:Proceedings of the 38th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology
題 名:Ultra-low-power ring-based wireless tinymouse
著者名:Yifan Li, Masaaki Fukumoto, Mohamed Kari, Shigemi Ishida, Akihito Noda, Tomoyuki Yokota,
Takao Someya, Yoshihiro Kawahara, Ryo Takahashi*
DOI:10.1145/3746059.3747615

問い合わせ
東京大学大学院工学系研究科
特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)
Tel:03-5841-6710
E-mail:ops@akg.u-tokyo.ac.jp